電子カルテのデザインは最悪
今日は老人ホームとクリニックでの勤務です。
点滴の溶解液を出そうと生理食塩液100mlを打つと、
こうなります。100ml製剤がないやんけ。
正解は生食と打つとでるのでした。(生理食塩水=略して生食です)
これは、医療事故を誘発するため、非常に問題です。
生理食塩水ならありふれた薬剤なのですぐにミスに気が付きますが、馴染みのない薬剤だと間違います。
かの有名な健康保険鳴門病院サクシン誤投薬死亡事故では、サクシゾン(ステロイド剤)と入力したつもりがサクシン(筋弛緩薬)を指示してしまい事故が起きました。
この事件以降、頭文字3文字で誤認しないよう、サクシンはスキサメトニウムに変更されました。ですが、電子カルテのオーダリングシステムでの不備での事故は再度起こります。
2019年の京都大学附属病院メイロン誤投薬死亡事故です。
高濃度のメイロンは心肺停止した人のアシドーシス(酸性状態)を補正するような薬です。
同じ薬剤なのに特殊な入力をしなければ候補に現れないシステムにより、事故は起こされました。
これは京都大学病院だけの問題ではなく、私の前勤務先のカルテでも同じ仕様でした。
メイロンとだけ打つと、このように表示されてしまう。
実際に研修医がめまい症に対してこの高濃度のメイロンを投与しているのをみて、全力で止めたこともあります。
この問題と解決策にはいろいろとあります。
ですが、電子カルテの仕様の悪さはこれだけではありません。これは氷山の一角です。
一番の諸悪の根源は、情報システムを構築するのに、セキリュティ的な理由を盾にして、各病院独自仕様にしていることです。
病院が電子カルテを導入するには、数億円規模の予算をかけて、その病院独自のハードウェア・システムを構築します。
つまり、同じ電子カルテメーカーなのに病院ごとに操作が違うこともあります。
保守状況は病院によってまちまちです。
もっとも悪いことは、アップデートが一切なされないことです。
機能改善を提案すると、1からその病院独自のプログラムを組む必要があるため、数百~数千万円単位のコストが要求されます。
こうして各病院独自のガラパゴス化した電子カルテが生まれ、ろくにアップデートされず古い時代のハード・ソフトウェアをユーザーが試行錯誤して操作します。
病院が変われば1から操作の覚え直しです。
この最悪なシステムにより、どれだけ医療事故が誘発され、医療者の労働効率を削いだか。。
通常のソフトウェアの開発環境としてはありえないではないでしょうか。
この問題は非常に根が深いのですが、いつかデジタル庁と厚生労働省が手を取り合って、改善してくれることを願います。
でも、私が生きているうちには達成されないだろうなぁ。