ロールモデルはナイチンゲール
Florence Nightingale(1820-1910)
近代看護学の祖であり、クリミア戦争での献身的な看護で有名であるが、彼女の偉業はそれだけではない。
ナイチンゲールの本当の業績とは、クリミア戦争の死亡者を統計学的に解析し、病院の衛生環境の悪さが死亡率の原因であることを突き止めたことである。
そして世界で初めてデザインを用いて可視化し、実行権力を持つイギリス女王や議会に訴えたことで、現場を変えたのが最も画期的であった。
仮に無味乾燥な統計データだけで訴えていては、女王や国会議員など統計学を専門としない相手には伝わらなかっただろう。
彼女は看護師でありながら、統計学者であり、デザイナーであった。
デザインの力があったからこそ、人を、組織を、世界を変えられた。
私のMissionは、彼女のように医療情報をデザインし、情報のギャップを埋め、
医療業界に変革を促すことである。
Infodemicの時代にどのように情報伝達するか
第4次産業革命以降、どの分野でもネットワーク・ビッグデータ・AIの波が押し寄せている。
医学領域でも論文は指数関数的に発行され、情報量は膨大に増えている。現代医学はInfodemic(情報氾濫)の時代である。
本来、私たちは医学や生命科学が好きで楽しく学んでいたのに、情報の洪水に溺れている。ますます専門性が増し、日々勉強する量は多くなるにもかかわらず、統計学は無味乾燥である。医療従事者の学習意欲は低下している。
現状の医学教育の伝える手段や方法に問題がある。
現在の硬直的な型通りのカンファや学会発表は、情報が伝わらず、理解されず、反応されず、楽しくないと感じる。
医学をこよなく愛するからこそ、現状は非常にもったいないと感じる。
General mindを持った医療従事者の育成が急務
私の将来の専門は感染症科である。
感染症科の教育というのは日本が特に大きく遅れている分野である。
例えば、風邪に対する抗菌薬処方はまかり通っているのも事実。
抗菌薬治療についても、病院や医師間の知識の差が歴然としている分野です。
これが、特に医師不足といわれている産婦人科とか病理とか法医学者ならば、医師を増やせば解決する問題かもしれない。
しかし、感染症というのはどの科でも遭遇する疾患である。
感染症科専門医を増やせば解決する問題ではない。
ほぼすべての医師・医療従事者が、感染症を診療しなければならない。
仮に私が感染症科のエキスパートになって、感染症科部長とか、医学部教授になったところで、
影響を及ぼせるのはせいぜい病院内とか一地域が限界である。
日本全国・そして世界の医療従事者に、標準的な知識と心得を啓蒙しなければならない。
感染症が専門でない若手医師に対して、あるいは一般市民に対して、いかに楽しくわかりやすく興味を持ってもらうか。
そして知識を配るだけではダメで、行動変容を伴わなければならない。
そしてこの問題は感染症科だけではない。
今や日本は超高齢社会であり、従来の臓器別の縦割り専門科志向を基盤とした日本の医療体制は限界に差し掛かっている。
誰もが心不全や慢性腎臓病、糖尿病などの生活習慣病、基本的な救急・集中治療や外科的手技、基本的な精神科・心療内科、そして高齢者医療・老衰・看取りを提供しなければならない時代である。
日本と世界の医療レベルを底上げするため、私が適切な情報設計と発信ができるデザイナーを目指すのです。
なぜデザインが有効か?
なぜデザインが人を変え、世界を変えられるのか。
文章ではなく視覚に訴える強みとは何か。
視覚言語には2つの認知特性がある。
貴学清水淳子講師の著書によれば、デザインは「線ではなく面で表示すること」、「一覧性と構造化ができること」が強みである。
これにより、文章では複雑で読み込むのに時間がかかる情報も、短時間で複数人に、言語以上の情報を伝えることができる。この機能的価値は教育の分野で特に有効である。
Visual thinking labo創設者の櫻田潤氏は、インフォグラフィクスのメリットについて、前述の機能的価値だけではなく、情緒的価値もあると指摘している。
何より、整理された情報というのは美しく、見ていて楽しく引き込まれる。知識だけでは人は動かせず、感情を動かすことで行動変容に繋がる。この情緒的価値は広告の分野で特に有効である。
Evangelistとなるために学び直しをしたい
デザインを学ぶのに美術大学である必要はない。
デザインに関する書籍は多くあり、独学でもデザイナーとなっている人は多数存在する。
そして美術大学は絵描き養成学校ではない。
なぜ美術大学という道を選ぶのか。
私の最終的な目標は、デザインの「Evangelist」(伝道者)として、
デザイン思考をもった医療従事者を増やすことある。
これからの時代、誰もがデザイン思考を身に着け、確かな情報設計力をもって発信すべきである。
また、病院組織内でのUXデザインが未熟で、過重労働や無駄な雑用が発生している点も多く存在する。
デザイン思考を持った医療従事者を増やし、デザインの力をもって様々な問題を解決したい。
そのために、小手先の技術ではなく観察・記録・分析・思考・編集・戦略・表現を通した深層の情報設計力を学びたいからだ。
なりたい職業/作りたい未来の例
例:三井住友銀行デザインチーム
例:HIV.info(米国CDCの啓蒙サイト)
例:NEJM visualabstract
※ナイチンゲールの画像はpublic domainのものを使用。その他の画像はstable diffusionを用いて作成。