担当した役割情報設計
意見公募・調整
制作
協力した役割企画・・・同僚とともに発案
制作・・・施設課に依頼

心肺停止

心肺停止状態では、治療が5分遅れれば救命率は25%、
10分遅れれば助かる見込みはない。


数秒の遅れが生命予後・機能予後に直結する
まさに1分1秒を争う極限の状況である

そして、「その時」は突然やってくる・・・

チームワークが全て

1人では蘇生をすることはできない

救命救急士と共に、気道管理係・心臓マッサージ係・薬剤投与係・薬剤準備係・電気ショック係・記録係・採血/点滴係に分かれて
各自の任務を全うしつつ、全体方針も注視する必要がある

チームワークには情報共有が最も重要だ。
全員で患者情報を把握しなければ有効な治療はできない。
しばしば突発的に召集されることも多く、途中参加者にも情報共有する必要がある。

そして蘇生には明確なリーダーと指揮統制が必要であり、
リーダーは全体の方針や思考過程を共有しながら明確に指示を出す必要がある。

  • チーム全員が情報共有して、蘇生チームプレイに貢献する
  • 初期研修医リーダーをしても、とりあえず知るべき情報がわかる
  • 途中参加者でも、患者背景や処置内容を簡単に把握できる

意見公募

心配蘇生は医師・看護師全員が関わる処置である。
オンラインホワイトボード Miroを使用し、誰もが設計の上流工程から関われるようにした。

レイアウトの情報設計

途中参加者でもわかるように、ホワイトボートを半分に分け、
「誰が」「何をしている」か明確にわかるようにした。

救急隊は左の患者情報欄に記入することで、
より効率的な申し送りができるようにした。

視線移動が自然となるよう、逆N字型となるように項目を配置した。

処置内容には余白を大きく設け、臨機応変に記録できるようにした。

各要素の情報設計

心肺停止の蘇生でまずやるべきことは、役割分担である

リーダーが誰かはっきりわかるように、一番目立つ部位に赤色で明記した。

逆に、細かい役割分担についてはあえて作成していない。その時々の状況で、潤沢にマンパワーが使える状況から、医師1人と看護師1人だけで、医師が枕元に立って呼吸管理を兼任しながら指示を出す・・・なんて状況もありうるからである。

また、経験豊富な人がいれば、その時の役割だけにとらわれず柔軟に行動してほしい面もある。

”明示するのはリーダーだけで、リーダーが各員の役割を指示した後、必要があれば記入する”スタイルとした。

ID     ・・・誰でもカルテ検索が素早くできるように明示

年齢・性別 ・・・一番の基本情報であり明示

         視角負担を減らすため、年齢と性別は一緒に記載しています

「生年月日」は年齢と同じ情報であり、蘇生の場面では絶対時間よりも相対時間の方がわかりやすいため削った。カルテ検索についても、とっさの場面ではIDと名前の方が検索しやすいと考える。

氏名    ・・・患者基本情報であり必要である。わからなければ「不詳」を貼る

既往歴   ・・・患者基本情報であり必要である

禁忌アレルギー ・・・アレルギーだけではなく、患者の禁忌全般を含めてまとめて記載できるようにした(透析シャントの有無、宗教の有無や輸血可否、その他注意など含めて)

プレホスピタル(病院前)での時系列や処置についても、
救急隊の手が空いている人に同時に書き込んでもらうことで、
時間効率よく申し送りできるようにした。

血液ガス・・・非常に重要な情報であり、声だけで聴くより

       いつでも見れる環境にあったほうがよいため、明記した。

その他の検査については、状況に応じて余白に記入する形式とした。

5H/5T・・・5H/5Tとは、心肺停止に至る原因のゴロ合わせのことである。

リーダーの思考過程が見え、何を鑑別に上げ何を除外したか、チーム全員が共有した方が、検査や処置の方向性がわかるので、あえて記載した。

また、チェックリスト形式の方が、漏れや抜けがなくリーダー初心者にとってやりやすいと考えた。

各項目は、見出しは黒背景に白文字、小項目は白背景に黒文字、フォントは創英角ゴシック体で統一し視認性を向上させた。

制作

各ブロックはマグネットで張り付ける形式にして、臨機応変に変更できるようにした。
デジタル上で実寸を計算し、院内施設課に発注した。

※架空の症例をシュミレーションしてみた図

結果

あまり成功したとは言えなかった

第一に、想定よりマグネットが大きすぎ、記載面を圧迫していた。

これは一度プロトタイプを制作していれば気づけた問題であった。

当時、離島勤務で半年間立ち会えなかったことが原因であったが、
すべてをデジタルで制作するべきではなく、
必ず実装に立ち会うことが重要であることを実感した。

また、親項目の背景と文字色を逆転させることはよくある技法であるが、
背景色を#000000の黒にしたことで、ホワイトボードの純白とコントラストがつきすぎ、かえって見づらくなっていた。
黒を表現するときは漆黒ではなく灰色を使うべきであることはセオリーであるも、当時はその知識がなく、私の実力不足であった。

また、オンラインホワイトボードMiroを使用して広く意見を集めたつもりであったが、実際にはパソコンを持っている職員は少なく、アクセスできない人が多数いた。病院内など、デジタルネイティブでない人に向けても、紙媒体でも広報すべきであった。

設計思想としては正しく、従来なかったホワイトボードを用いて蘇生のチームワークを向上させるという戦略的な目的は達成できたものの、戦術的には失敗に終わった。

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